2017年6月21日水曜日

ハル・ハートリーの「ヘンリー・フール」三部作、クラウドファンディングの詳細を日本語に訳してまとめました。

【「ヘンリー・フール」三部作が初めて観られるチャンス!】
 

90年代のインディーズシーンを席巻した映画監督ハル・ハートリー(公式サイト)が、『ヘンリー・フール』(1997年、1999年日本公開)と続編の『フェイ・グリム』(2006、日本未公開)、『ネッド・ライフル』(2014、日本に公開)からなる「ヘンリー・フール三部作」のBOXセットを自らの映画会社POSSIBLE FILMSからリリースするためにクラウドファンディングを募っています。

自分がこのプロジェクトに成功して欲しい一番の理由は、日本ではVHSテープしかリリースされていない『ヘンリー・フール』と、日本未公開の『フェイ・グリム』『ネッド・ライフル』が、日本語字幕が付いた状態でHD画質でリリースされるからです。
 
『ヘンリー・フール』は自称・天才作家のヘンリーと、詩人の才能を開花させるゴミ収集人サイモンの交流を描いたヒューマンコメディでした。サイモンの姉でヘンリーと結婚したフェイがヨーロッパでヘンリーの行方を探す『フェイ・グリム』と、ヘンリーとフェイの息子ネッドが不幸の現況である父親を殺そうする『ネッド・ライフル』は、同じキャラクターによる繋がった物語でありながら、日本では劇場公開もソフトリリースもなく、どんな内容なのか噂を聞くだけの状態が続いてきました。
 
今回、ハートリーは日本のファンにも「ヘンリー・フール三部作」を楽しんで欲しいと、日本語字幕(及び仏、独、西、英の5か国語)を付けた状態でのリリースを望んでいます。「日本の人に観て欲しい」って、そりゃこっちだってそうだよ! ずっと観たいと思ってたよ!
 
【ハル・ハートリーが、日本語字幕を付けるための資金を募っています!】

今回のクラウドファンディングの〆切は7月13日(日本時間22時37分)。目標額に達しなくてもBOXセットはリリースされるけれど、資金が集まらなかった場合に日本語字幕が付けられるかどうかは危ういところだそうです。
 
しかし、日本から100ドル以上の援助者が100人集まれば、ニーズがあると判断して字幕を付けるとハートリー本人が言っています。100人のファンの声があれば、初めて日本語字幕で「ヘンリー・フール三部作」が観られるってことですよ。マジで。

以下、状況を箇条書きにします。

・クラウドファンディングが成功すれば、日本語字幕付きの「ヘンリー・フール三部作」BOXセットがリリースされる。
・もしファンディングが失敗しても、日本から100人以上が100ドル以上の参加申請をしていれば、日本語字幕は付く。
・クラウドファンディングに100ドル以上の参加をすると(申し込んだプランに応じて)DVD BOX+ハートリーの新作CDかBlu-ray BOX+CDが、特典として送料無料で送られてくる。
・参加しても課金されるのは、クラウドファンディングが成功した時のみ。目標額が集まらなかった時はクレジットカードに課金はされない。
・今回のプロジェクトが成功すれば、『トラスト・ミー』などの過去作もすべて日本語字幕付きでリリースする予定である。

ハートリーの映画のファンとして、ぜひ実現するよう応援したいのですが、クラウドファンディングのキャンペーンを行っているKickstarterが海外のサイトで(今年中に日本語バージョンがローンチされる予定)、英語のサイトだから何が書いてあるのかわからない、どう参加していいのかわからない、という方も多いようです。
 
なので、クラウドファンディングの募集ページを片っ端から日本語に訳してみました。どういう企画なのか? ハートリーの意図はどこにあるのか? 今後の展望は?といった疑問に答えてくれるかと思います。
 
クラウドファンディングのサイトはこちら(英語)になります。
 
以下に日本語訳(下手な訳文と多少の間違いはご容赦ください、酷いものはご指摘ください)を貼りますので興味のある方、どうか読んでみてください。
 
また、ファンディングに参加する手続きについては「キックスターター 参加方法」とかで検索するか、Kickstarterの詳しい解説をしてくださっているブログがありましたので、こちらにリンクを貼ります。とりあえずクレジットカードは必要ですね。
 
またどの特典プランを選ぶかは、私見ですがDVDとCDが送られてくる100ドルのプラン”か、“Blu-rayとCDの115ドルのプラン”かの二択だと思います。それ以下だとせっかく日本語字幕が付いたソフトが手に入らず、あまり参加する意味がないですし、発売されてから注文すると送料が余計にかかります。(※自分は映画ライターですので、今後の資料としてBlu-ray+CDにオリジナル書籍が付く175ドルのプランを選びましたが)

・追記:BOXセットの価格はDVDが100ドル、Blu-rayが115ドル。つまり今回のクラウドファンディングに参加することは、実質的には出資というより、リリースされるソフトをハートリーの新作CDと送料無料という特典付きで定価購入するのと同じです。

・追記2:少額の支援でも10ドルから特典(特製しおりとか)が用意されていますし、ハートリーの気持ちに応えたいという気持ちであれば、金額はわずかでも全然構わないじゃないか、と「100ドルか115ドルの二択」と書いたこと反省しております。1ドルからでも参加できるはず。
 
以下、クラウドファンディングの募集要項です。実際の申し込みはKickstarterのサイトから。
  「ヘンリー・フール三部作」BOXセット、クラウドファンディングサイト
https://www.kickstarter.com/projects/260302407/henry-fool-trilogy-boxed-set/
 
※こちらにハートリーと「ヘンリー・フール三部作」についての記事も書きました。もしよろしければ。
http://www.shortcuts.site/piece/3132

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《キックスターターゴールド:「ヘンリー・フール三部作」BOXセット》

https://www.kickstarter.com/projects/260302407/henry-fool-trilogy-boxed-set/
Kickstarter クラウドファンディングページ
 
↓「ヘンリー・フール三部作」BOXセット、キャンペーン動画
https://ksr-video.imgix.net/projects/2943702/video-787435-h264_high.mp4
 

『ヘンリー・フール』(初のHD画質)、『フェイ・グリム』、『ネッド・ライフル』の三部作が、五か国語字幕付きのセットになって帰ってきます!

「ヘンリー・フール三部作」BOXセット

ヘンリー、帰還せり!


1998年のカンヌ国際映画賞で脚本賞を受賞した(今でも光栄です!)『ヘンリー・フール』が正式にHD画質でリストアされました。長い紆余曲折を越えて作品の権利も自分の元に戻ってきました。そこで私(ハル・ハートリー)は同作と『フェイ・グリム』『ネッド・ライフル』からなる三部作をBOXセットにまとめ、クイーンズに暮らすグリム一家の面々と、友人であり夫であり恋人であり父親である比類なき人物“ヘンリー・フール”が織りなす大河ドラマを改めてお届けいたします。
 
3作品すべてに英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、そして日本語の5か国語字幕が付く仕様です。
 
このファンディングが成功すれば、「ヘンリー・フール三部作」BOXセットはHDリストアを施したコレクションシリーズの第一弾になります。今後3年で全作品に5か国語字幕を付け、私の会社“POSSIBLE FILMS”が手がけた新パッケージでhalhartley.comにて販売する予定です。
 
新たにデザインされた今回のBOXセットには、レアな写真やエッセイを収録した16ページからなるブックレットを封入し、メニュー画面の操作性も向上させました。
 
「ヘンリー・フール三部作」BOXセットは2017年の11月からhalhartley.comで独占販売いたします。BOXセットをキックスターターのクラウドファンディングを通じて先行注文いただければ、100USドル(さらなるご支援も大歓迎です)で送料無料、間もなくリリースされる私の新作CD「After The Catastrophe」と一緒にお届けします。CDには新曲、「ヘンリー・フール三部作」『トラスト・ミー』『The Girl from Monday』『はなしかわって』のサントラ曲の新バージョンを収録する予定です。
CD「After The Catastrophe」
その他にも、BOXセットとオリジナル2018年カレンダーのセットなど、本プロジェクトをご支援いただくための様々なプランを用意いたしました。
2018年オリジナルカレンダー

POSSIBLE FILMSは、これからもますます意欲的な活動を続けてまいります。
 
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私自身、三部作を観直して改めて『ヘンリー・フール』が現代に通用することに驚きました。いつも素晴らしい名優ケヴィン・コリガン扮するウォーレンが、政治活動のビラを手に「アメリカを守れ、アメリカから!」と叫ぶ姿は象徴的です。『フェイ・グリム』は、敵意と無理解が蔓延するようになった911後の世界において、まさにフェイがそうであるように、善良ではあるけれど知識に乏しい平均的なアメリカ人像を反映しています。『ネッド・ライフル』では、和解の道を避けるように、主人公が明快さや平穏を求めるあまり暴力的な衝動に走ります。

3本の映画はまったく違うタイプのエンターテインメントで、それぞれの間に10年近い時間差もあります。しかし3本がまとまることで、私自身が属しているカルチャーの在り様を党派に偏ることなく映し出そうという、私が試みた形に限りなく近づくのです。そして私だけでなく多くの人が、この世の中と立ち向かっていると思っています。

今回この三部作をひとつのパッケージとして送り出せることを本当に嬉しく思っています。

また『ヘンリー・フール』は2017年11月より、アメリカとイギリス以外の国向けにhalhartly.comにてストリーミング公開もします。

DVDは北米と日本向けにNTSC形式、他の国々用にPAL形式で作成し、どこの国でも視聴できるようにリージョンコードは設定しません。

読んでいただいてありがとうございます。私は仲間と共に、これからの30日間、メールやニュースレター、音楽や動画を投稿しながらキャンペーンの周知に努めます。願わくはみなさんにお楽しみいただけて、興味を持っていただけますように。感心が持てない方々もお気遣いなく。それが人生ってものですから。

それではごきげんよう
ハル・ハートリー
2017年6月13日
 
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【過去のキックスタータープロジェクト】
 
私はこれまでに2度、キックスターターのキャンペーンで資金を得ることができました。一度目は2011年に『はなしかわって』を配給するために。2013年には前作『ネッド・ライフル』を制作するためでした。
『はなしかわって』より
『ネッド・ライフル』より
キャンペーンの成功は、キックスターターによって自分が世界のファンと直接つながりながら映画製作をできると確信させてくれました。そして次に私がやるべきことは、これまでに作ってきた映画を、私の作品を楽しみにしてくださった国々の言語を通じて鑑賞できる状況を作ることなのです。だからこそ、私は「ヘンリー・フール三部作」のクラウドファンディングをキックスターターで募集することにしたのです。
 
 
【リスクと挑戦】
 
前回のキックスターターでのキャンペーンに比べれば、今回出資いただくリスクは小さいものです。パッケージされる3本の映画はすでに完成していて、いい状態で保存されています。その意味では、これは決して難しくなく、楽しいプロジェクトだと言えます。
 
ただ、各国語の字幕については新しいチャレンジであり、われわれが鋭意努力しているところろです。翻訳と字幕の作業は、アメリカの業界をリードしている3社と協力して進めており、特にフランス語に関しては、非常に優秀で信頼している翻訳者であるマチュー・ゲルマン氏に依頼しました。またポッシブルフィルムズには世界各地によき友人で、英語と母国語に通じた仲間たちがおり、彼らが各国語の字幕に協力してくれています。

しかし、時には製品に思わぬトラブルが起きるケースもあります。『ネッド・ライフル』のプロジェクトでは、PAL形式のディスクNTSC形式のパッケージに紛れ込む事態が発生しました。20~30人の支援者からディスクが再生できないと報告があり、単なる不良品の問題ではないと認識することができました(今回はすべてのディスクに正しいフォーマットの記載をしています)。

そして当然のことではありますが、言語の翻訳は厳密な科学とは違います。中には翻訳の表現が違うのではという意見の方もいらっしゃるかも知れません。ただ私たちは、それぞれの言語に対して翻訳のグループを作って、最も筋の通った字幕を作ることを心がけています。

【「ヘンリー・フール三部作」BOXセット、クラウドファンディング参加特典一覧】
 
10USドル BOOKMARK
ヘンリー・フール三部作オリジナルしおり

25ドル CD
ハル・ハートリー新作CDAfter The Catastrophe
ヘンリー・フール三部作オリジナルしおり

35USドル CALENDER
halhartley.com 2018年オリジナルカレンダー、しおり

45USドル BOOK
オリジナルブック(インタビューやエッセイを収録)

50USドル CD & CALENDER
新作CD、カレンダー、しおり

75USドル CD, CALENDER & BOOK
新作CD、カレンダー、ブック、しおり

100USドル DVD SET & CD ※送料無料
ヘンリー・フール三部作DVD BOXセット、新作CD

110USドル DVD SET & CALENDER ※送料無料
ヘンリー・フール三部作DVD BOXセット、カレンダー

115USドル BLURAY SET & CD ※送料無料
ヘンリー・フール三部作Blu-ray BOXセット、新作CD

120USドル DVD SET, CD & CALENDER ※送料無料
ヘンリー・フール三部作DVD BOXセット、新作CD、カレンダー

125USドル BLURAY SET, CD & CALENDER ※送料無料
ヘンリー・フール三部作Blu-ray BOXセット、新作CD、カレンダー 
 
140USドル DVD SET & BOOK ※送料無料
ヘンリー・フール三部作DVD BOXセット、ブック、しおり
 
150USドル THE NED ※送料無料
ヘンリー・フール三部作DVD BOXセット、新作CD、カレンダー、ブック 
 
175USドル THE NED ※送料無料
ヘンリー・フール三部作Blu-ray BOXセット、新作CD、カレンダー、ブック

250USドル THE FAY ※送料無料
DVD BOXセット、Blu-ray BOXセット、新作CD、カレンダー、ブック、しおり

500USドル THE HENRY ※送料無料
DVD BOXセット、Blu-ray BOXセット、新作CD、カレンダー、しおり
『ヘンリー・フール』オリジナル白黒スチール(選択可)

1000USドル SPECIAL THANKS ※送料無料
DVD BOXセット、Blu-ray BOXセット、新作CD、カレンダー、ブック、しおり『ヘンリー・フール』オリジナル白黒スチール(選択可)
ハル・ハートリー撮影の俳優ポートレート写真(選択可)

5000USドル SPONCER ※送料無料
DVD BOXセット、Blu-ray BOXセット、新作CD、カレンダー、ブック、しおり、白黒スチール(選択可)、ポートレート写真(選択可)
スポンサーとしてお名前をクレジット

10000USドル PRINCIPAL SPONSOR ※送料無料
DVD BOXセット、Blu-ray BOXセット、新作CD、カレンダー、ブック、しおり、白黒スチール(選択可)、ポートレート写真(選択可)
プリンシパルスポンサーとしてお名前をクレジット
 
ALL PHOTOS COPYRIGHTED BY POSSIBLE FILMS, LLC

2017年4月13日木曜日

『夜は短し歩けよ乙女』鑑賞。関西弁にうるさい関西人である自分を呪う。

原作も「四畳半神話体系」も知らないまま観た『夜は短し歩けよ乙女』がたいそう面白くて、劇場の売店に「劇中の絵本、本当にあるんです」とポップがあったのでパンフも絵本も買ってしまう散財っぷり。湯浅政明監督作としてはエナジーとパッションがほとばしる大傑作『MIND GAME』にも連なる豪腕と破天荒さに魅了される。
 
物語の舞台が自分が育ったエリアの京都が大半であり、このカットはあの交差点だなとか、映ってる「餃子の王将」は百万遍店だなみたいなことまでわかる。ただわかる、というだけでなく、よく知っている街がちゃんと描かれていて、荒唐無稽なファンタジーが土地と深く結びついて見えるのが刺激的だった。
 
作品のタイプは違うけれど、『この世界の片隅に』を観た呉や広島のひとは、きっと自分よりももっと広がりを感じながら観ていたのだろうなと思ったり。
 
あと男の方の主人公にだけ特化してみるとテーマ的に先日観た『レゴバットマン ザ・ムービー』と重なる要素が多く、内面的な葛藤をどう映像化するか・・・みたいなところも比較できて興味深かったです。
 
ただ、原作をまったく知らない者としては、京都が舞台なのに誰も関西弁を話さない世界観に馴染むまでに随分時間がかってしまった。ああ、この映画ほど、関西弁にうるさい関西人である自分を呪ったことはない。クセのあるセリフ回しが多いから原作準拠なんだろうと思うし、作品としても成立している。ただ、ここまで濃密に「京都」が描かれている以上、京都弁のバージョンも観てみたい。
 
弭間さん、これ読んでるかどうかわかりませんけど、ソフト化の際には京都弁吹替え版も収録してはくれますまいか、とダメ元でリクエスト。

2016年10月8日土曜日

深田晃司監督による小説版『淵に立つ』の話。

ああ、今日は『淵に立つ』の公開日なのか。イヤな空気を淡々と浴びせられ続けるような映画ですが、怖いくらい面白いです。
 
そして深田監督が執筆した小説版がとてもよかった。なにがいいって文章がよかった。簡潔で押しつけがましくなく、丹精で美しかった。それでいて、後半になるにつれて話者の人格が漏れ出るような綻びが出てきて、完璧な世界観がちょっとイビツになる。それが物語の揺らぎとシンクロしている気がする。
 
いや、気がするだけで全然そんな意図じゃないかも知れないけれど、完璧じゃないことが重要な気がしたのです。映画の行間を補足するサブテキストのようで、やっぱり映画で目にする役者の演技と小説の人物像がイコールでないのも面白かったですし、終盤の展開も映画とは違って、小説のが当初の構想に近いらしい。
 
カンヌ受賞もあってメディアの露出も随分増えた気がする深田監督ですが、小説家・深田晃司のデビューもちょっとした事件ではないかしら。

 
 
※イビツといえば「ここも?」って思ってしまう意外な箇所でのカタカナの多用。ちょっとご本人に意図するところをお聞きしたいです。
 
 
小説「淵に立つ」
https://www.amazon.co.jp/dp/459115145X/

2016年9月11日日曜日

『淵に立つ』が“生え際”映画の一本に連なる傑作だった件。

深田晃司監督作『淵に立つ』は世評に違わず傑作だった。おそらく黒沢清やミヒャエル・ハネケの文脈で語られるだろうし、実際にその誘惑にも駆られるのだけれど、本質的なところでは異質かつ独特な映画ではないかと思う。

これまでにも深田監督の作品に匂っていた“家族”という形態への不信感のようなものが、一見冷徹に思える作風の裏で怨念のようにふつふつと沸騰していて、結果的に監督の作品でもっとも人間的かつ感情的な作品になっていたように感じた。

やたらと不穏で蠱惑的な浅野忠信の怪演に関してあと少し。

浅野忠信の最近の姿を見る限り、髪の生え際が突然不安定になってきている模様。それは『淵に立つ』でも同じで、むしろ強調されているようにさえ感じるのだが、浅野忠信演じる八坂の丹精な外見、佇まいの中であの生え際のアンバランスさが突出し、あのキャラクターの、ひいては映画全体のいびつな感触を増幅しているのだ。

薄毛のお前は髪の具合に過剰にセンシティブだなと言われるかもですが、キャラクターのビジュアルって映画全体を支配するほど重要なもの。その点で『淵の立つ』の八坂の生え際は、『ノー・カントリー』のハビエル・バルデムのオカッパ頭級のパワーを放っていると思う次第です。

と、『淵に立つ』から派生して、“生え際”映画祭で上映するべき作品を考えてエレベーターが人間を襲うホラー『ダウン』を思い出した。

『ダウン』はナオミ・ワッツがたぶんブレイク前に契約してしまったらしく「なんでこんなB級ホラーに?」と驚いたものだが、イケメン扱いの主人公がやけに薄毛であり、彼が映る度にこれがB級映画であることを痛感させられるのである。おかげで「エレベーターが人を襲う」という強引な大前提も違和感なく見られてしまうという、まるで世界観を象徴するような薄毛であった。

この流れで友人に思い出させてもらったのがケビン・マクドナルド監督の潜水艦映画『ブラック・シー』。リストラされた潜水艦乗りたちがナチスの沈没船を見つけて財宝を手に入れようとするのだが、船長を演じたのがジュード・ロウ。

これが頼れるベテランなんだけど、時代に取り残され、家族も失い、カネだけはいるという散々な苦境に陥っていて、ジュード・ロウの生え際のおぼつかなさがこれまたキャラの不安定さや、しょぼくれた境遇にリアリティをもたらしているのだ。

ジュード・ロウは公私ともにモテモテのイケメンキャラで売ってきたが、同じく薄毛を強調していた『アンナ・カレーニナ』のようにイケメン崩れの成れの果てのような役柄の時に真価を発揮すると思っています。ジュード・ロウ、薄毛界のトップランナー。

と、話が随分と逸れたところで了。

2016年9月6日火曜日

女優・高木珠里さんの一人芝居「シュウチャク」が最高で明日までだった件。

もう9年も前の話になるが、知人から電話があった。

「後輩が映画を撮ったんです、これが素晴らしいんです、村山さん、普通友だちが撮った映画が面白いんで観てくださいなんて言われたら絶対に面白くないじゃないですか、でもこれは本当なんです、ぜひ観て欲しいんです」

そこまで言うのであればとマスコミ試写会の最終回に滑り込み、度肝を抜かれたのが吉田恵輔監督の長編デビュー作『机のなかみ』だった。確かに素晴らしかった。才気と創意と、その辺の凡作どもを蹴散らしてやるという気概に満ちていた。あの時電話をくれた小出さんには今でも本当に感謝しています。

で、何が書きたいと言うと、友人でバンド仲間でもある女優・高木珠里さんの一人芝居「シュウチャク」が本当に素晴らしかったということ。2年前だかの初演も観ていて充分に面白かったのだが、精度もクオリティも格段に上がり、なにより1時間5分という尺に対する満足感がみごとだった。

自由奔放で、攻めの姿勢を貫きつつ、客観性が伴っていてウェルメイドですらある。そして珠里さんがやっていることが本質的にとんでもなくくだらないのがいい。特に中身を解説したりはしませんが、このパフォーマンスが平日の三日間しか観られないのはもったいなく、明日の最終日にまだ席があるらしいので、せっかくなのでご覧になってはいかがでしょう。

江戸川橋「絵空箱」にて、14:00と19:00の2回上演だそうです。

高木珠里公式サイト→http://takagijuri.com/

2016年9月4日日曜日

脚本家・仁志原了さんのこと

脚本家の仁志原了さんが亡くなったと知った。6月に大動脈解離で倒れられて先月26日に亡くなったそうだ。仁志原さん、とさん付けで書くのは、仕事でないところで2、3度お会いする機会があったからだが、先方が覚えていらっしゃるかどうか自信がない程度の面識だった。

2016年8月18日木曜日