ジャック・ブルース。案の定というか当然というか、訃報の肩書は「元クリームのベーシスト」。
クリームは、クラプトンの「ライブの途中でギターを弾くのを止めたら、ほかの2人は気づいた様子もなく弾き続けていて、その時に終わりだと思った」というエピソードが好きですが、正直ジャック・ブルースについてはあんまりよく知らない。ウチのCD棚にはクリーム数枚と、グラハムボンドオーガニゼーションくらいしかないし。
ただ二十歳のときにライブを観た。ロンドンで。
貧乏旅行でテントシティに泊まり、マクドナルドでさえ高いと思えるロンドンでは、当時ピカデリーサーカスの地下にあった日本の弁当屋で鮭フライ弁当を買うのが精いっぱいだったが、せっかくなんでライブには行ってみたい。
ストーンズ所縁ってことでライブハウスのマーキーに行ってみたら(当時の)当世風のベタなヘビメタバンドがやっていて拍子抜けだったんで、せめて知ってるひとのライブを観ようとタイムアウトを開いたらジャック・ブルースの名前が飛び込んできたのだ。
ガイドブックには治安が良くないと書かれた地域の、古い劇場を改装したライブハウスは、それなりにリッチそうな服装の白人の中高年ばかりだったが、自分以外に2人だけアジア系の女性がいて、ちょっと話したら日本のひとで、「今日はドラムがサイモン・フィリップスなの、ジャック・ブルースはどうでもいんだけど、サイモンが素晴らしいのよ」と力説していた。
ステージにはドラムセットと、ベースアンプ、そしてマーシャルのギターアンプにクラベビのワウペダル。それだけのセッティングで、出てきたのはブルースとフィリップスと、名前忘れたけど若いバカテク系のギタリスト。
で、二十歳の自分からすればブルースの見た目はただのちっこいオッサンで、ちょっと甲高い歌声も情けなく響き、でもブルースもフィリップスもギターのあんちゃんももうやりたい放題に弾きまくっていて、その轟音に上品にワイングラスとか持って立っていたお客さんたちはなんとも反応しづらそうで、ヘンなものを観たなあという印象だけが残っている。
日本人の女性2人は「サイモン素晴らしかったわっ!」つって帰って行って、夜中にひとり、下町風の街並みをこわごわ地下鉄の駅まで歩いて、特に襲われもせずいまも生きていることを感謝します。いまさらだけどジャック・ブルースのソロでも聴いてみようかしら。
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